MENU
CLOSE
2021年2月、東京表参道で個展「ネオ」が開催された。いま注目のイラストレーターの初個展ということで、会場には若い女性を中心に多くのファンが来場。Z世代から30代、また普段あまり個展では見られないような女子高生の姿もあり、人気の高さを改めて印象づけることになった。
今回のコラボレーションは、この個展での活躍がきっかけとなって実現している。若い世代に単なるモノだけでなく、ライフスタイルやカルチャーまで含めた価値を届けたいというジョンマスターオーガニックの想いに、ダイスケリチャードが応えた。女性の髪を印象的に美しく描く画風はブランドとの親和性が高く、水や風にゆらめくやわらかな髪の動きで、はかなげながらどこか強い芯を感じさせる女性像を浮かび上がらせる。
コラボレーションのイラストに描かれたのも、水にたゆたう長い髪に包まれているかのような女の子。ポップでありながら、静けさもある。「髪を輝かせるミストとブラシのヘアケアセットということだったので、髪の潤いや流れを表現しやすい水中のシーンを描きました。いつも一番注目してほしいところから描き始めるのでこのイラストも髪の部分を最初に描いて、そこから全体の構図を広げていきました。ターゲットが若い方ということだったので、ブルーの落ち着いたベースに赤の差し色をアクセントにして、ちょっと尖ったフレッシュな雰囲気も持たせています。もうひとつこだわったのは、ポーチにしたときにイラストだけどロゴマークに見えるようなシンボリックな美しさです。せっかくなので、ぜひポーチは持ち歩いて使ってほしいですね。今だったらマスク入れとか、厚みもあるからモバイルバッテリー入れにもちょうどいいかと思います」
「自分だけにわかるレベルのキーワードや言葉遊びのようなものを入れることが多いです。ときどき意図を推測してくださる方もいらっしゃるんですけど、あまりこちらからは説明しないようにしています。こう見てください、というよりは好きな受け取り方をしていただければいいと思っているので。なんとなく見て、なんとなく良いなとか思ってくれるだけでもいいし、引っかかるところがあれば深堀りしてもらってもいいですし。受け取る方の感覚で自由に楽しんでいただければ嬉しいです。ただ、掘れば掘るほど面白いものが出てくるような絵を描きたいとは思っています。今回のイラストにもいくつか隠しモチーフはあるかもしれませんし、そんなことも含めて楽しんでもらえれば」
自身もコラボレーションを心から楽しんだという。とはいえ以前からジョンマスターオーガニックをよく知っていたわけではないそう。今回、SDGsや環境に対する理念や活動を知り、共感したのもコラボレーションを受けた理由のひとつ。
「自分で判断できるほど詳しい分野ではなかったので、近しい人たちにこの仕事をどう思うか聞いてみたら、良いじゃないかと言われまして。姉が「意志や考えをちゃんと持っている人が選ぶコスメという感じ」とブランドのことを言っていたのも印象的でしたし、環境についての取り組みとか考え方を聞いて、僕自身も今後SDGsについて深く考えていくいいきっかけになるかなとも思いましたし。でも何より心が動いたのは「琵琶湖」です。今回の計画の1つに故郷の琵琶湖の環境保全活動に寄付というのが入っていたことがお受けする大きな決め手になりました」
ダイスケリチャードの出身は滋賀県。滋賀について語りだすと止まらないほど地元愛に溢れている。自然環境が豊かで歴史や文化の彩りもある土地で育ったことは、自身ではわからないが、もしかしたら創作にもどこか深いところで影響を与えているかもしれないと語る。
「滋賀県はいいところなんですけど、よさを伝えるのが難しいんですよね。ぼくが育った大津から感じた話になってしまうんですけど、琵琶湖や比叡山など自然が豊かというのが大きな魅力な一方で、電車ですぐに京都や大阪にも行ける。のんびりした田舎だけど、都会も近くて不便ではなくて、住んでいて居心地がいいところが気に入っています。でもそれだけじゃ言い表せない、実際に住んでみないとよさがわからないところもあるんです。自分だけが魅力を知っていて支えてあげたいとか、離れてさらに好きになったりして。僕以外、誰も良さに気づいてない女の子みたいな感じじゃないですかね」今回のコラボレーションでは、製品の売り上げの一部を滋賀県の琵琶湖の環境保全活動に寄付。「地元への思い入れが結構強いので、身近なところから始められる環境活動の一環として、SDGsやサステナブルといった難しい言葉に構えないで、自分の関心があることから何か環境貢献ができることは嬉しいと思います」
「僕はイラストの仕事をしたいと考えていたというよりは、趣味で描いていたらいつの間にか仕事になっていた感じなんです。自然の流れに身を任せてきたといいますか。ただ、やりたいことしかしない、納得のいかないことはしないというスタンスでやってはいて。これからも、イラストに限らずやりたいと思ったことは色々挑戦していきたいですね。僕のような活動のしかただとデジタル系の人という印象をもたれがちですが、僕自身はわりとアナログなタイプで、漫画にしても音楽にしても人間味のあるカルチャーが好きなんです。流行りとは逆を行っているかもしれませんが、僕はそれが好きなんだからしょうがない。ですから環境のことについても、今回の琵琶湖への寄付のように関心のあることをフックに、気負わずに自分らしく取り組んでいけたらと思っています」